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その後、始まりの街から離れたひっそりとした村に向かった。
宿を取り、今日の所は休むことにした。道中で手袋を購入して、手の魔法陣を隠した。
その町は、何故かげっそりとした痩せ細った村人たちが住んでいた。
宿屋の店主に話を聞いてみると、この村を管轄している領主が重い税金と貢物を要求しており、それができない村人たちは女は領主の慰み者として、男は領主の労働力として過酷な労働を強いられているらしい。
だからか、と思った。
だって、女と若い男がこの村にはいないから。
はぁ、こういう話を聞くと無性にイライラする。
もう少し状況を知りたくて街を歩いてみることにした。
宿屋の店主は、
「この村の中は今不安定で盗みを働く奴らもいるんだ。それに、感染病も流行ってきているからお嬢ちゃんは出ねぇ方がいい。」
と忠告してくれたがどうしても見て回りたかった。
外に出ると井戸の側に立っている、老婆がいた。
その老婆の腕も枝のように細い。
どうやら水を汲みにきたらしい。
「大丈夫ですか。手伝うのでこの村について教えてください。」
そっと水の入った桶を持った。
「おや、ありがたいねぇ。家が少し遠いから二時間くらいかけねばと思ってたんじゃが、本当にありがたい。」
ゆっくりと、穏やかに喋る老婆は、自らの名前をオンリと名乗った。
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