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「お嬢さんは、ひとり旅かい?」
「はい。」
「そうかい、そうかい。若いのに偉いねぇ。」
老婆の家に向かい歩いていると、殴り合いだったり、一方的な暴力や盗みがみられた。
眉をひそめながら老婆のゆっくりした足取りに合わせて歩いた。
「ここ二年はずっとこの有様さ。この村では弱い者が強い者にやられてしまう世界でねぇ。」
「…どの国でも同じですよ。この世には奪う者と奪われる者しかいません。」
誰かしらの幸せを奪ってでしか自分の幸せを得ることができない。
弱肉強食の世界で生きていくには、賢く、強くなくてはいけない。
「そうかい。若いのに達観しておるの。おや、見えてきたよ。あれがあたしの家だよ。」
老婆が指指したのは今にも崩れそうなボロボロな小さな家だった。
「ほんとにありがとうねぇ。お茶でも飲んでいっておくれ。」
お言葉に甘えて、お邪魔した。
家の中には、机と椅子が三つ、簡単なキッチンと奥の部屋にベットがあるだけだった。
「そこに座っておくれ。」
椅子の一つを勧められ、それから老婆は魔法で火をつけて慣れた手つきでお茶を用意した。話すとするかねぇ、と前置きを挟んでから老婆は悲しげで恨みのこもった言葉でゆっくりとこの村について語り始めた。
『この地獄の始まりは前の領主が死んだ三日後に始まった。
この村は元々、二つの領土に分かれていた。酷い災厄が起きた時、二つの領土は協力して災厄を乗り越えようとした。
一つの領土は旅人や冒険者がよく訪れ、拠点にされていたことが多く、鋼鉄が大量にあったため、武器などの生産が活発だった。
もう一つの領土は、のどかで農業の発展が著しかった。
両方の領土の利害が一致し、領土の協定はすぐさま承認された。
多少の被害を受けたものの、無事に災害を乗り切ることができた。
三年の間二つの領土が密接に関わり合っていたため一つの領土と化していた。再び二つに分かれるのが不可能なほどに。
そこで二人の領主は話し合い、領土を正式に一つにし、二年ごとに領主を交代することになった。
最初の十年はずっと平和だった。しかし、それぞれの一代目の領主が亡くなるとその子供はロクでもない領主となった。
それでも、片方の領主はまだマシな奴だった。
領が一つになるときに交わされた約束事に、領民の八十パーセント以上が領主の交代を求めた場合、二年が経ってなかろうと大人しく領主としての役割をもう一方へ譲る。
というものがあった。ロクでもない方は一年と待たずに領主を降ろされた。
根に持ったその領主はもう一人の領主と一族を殺してしまった。
それからというもの領主の暴走は止まらず、領民から金を巻き上げ、ろくに仕事もせずに遊んで暮らしている。
反乱を起こそうにも、残っているのは年寄りと子供だけ。
あとはこの村は滅びるのを待つだけ。』
人間は欲に溺れてしまうものだ。
一度楽を知った者は止まらない。
よくある話。それで終わらせるのは簡単だけれど、ただ、少しの気まぐれで聞いてみた。
「…それで、貴女は、どうしたいんですか?」
「……あたしは、「そんなの殺したいに決まってる‼︎」こら!リオ。」
急に入り口から背の高いフードを被った青年が入ってきた。
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