主人公視点

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「お孫さんですか?」 老婆は青年を家の中に入れ、急いでドアを閉めた。 そして首を横に振りながら青年の分のお茶を作り出した。 「いや、彼は知り合いの息子であたしの生活を手伝ってくれているのさ。」 青年は慣れた様子で椅子に座り、怒られた子供のように拗ねた様子で頰を膨らませていた。 フードをとった彼は白い髪と目をしていた。 天使のような容姿の彼は女性と間違ってもおかしくないほど可愛らしい人だった。 「何?旅人さん。」 むくれながら、聞かれた。 「さっきの話、してもいいですか?」 「いいけどさ、そのフードとってくんね?怪しいんだけど。」 流石に失礼なのかな。 フードをとり、首を軽く横に振った。 青年の方を見ると口をあんぐりさせてこっちを見つめてきた。ほのかに顔を赤くさせて。 「お…まえ、やっぱフード被っとけ。絶対に誰にも見せんな。どっかに連れ去られるぞ。」 雑にフードを被せられた。もういいのかな。 「じゃあ、話聞かせてください。貴方はなんのためになにをどうしたい?それをするにあたって貴方が払える代償は?」 青年の美しく、汚れの知らない吸い込まれるような瞳を見つめながら尋ねた。 「俺の名前は、レオドールだ。レオって呼べ。なんのため?そんなの恨みを晴らすために決まっている。ばあちゃんのじいちゃんだって、笑顔で溢れてたこの村だって、俺の家族だって。いつか倒してやるために頑張って鍛えた。俺は代償に俺の命だって差出せる。」 芯が通っていてすごいなぁ。 でもね、 「復讐しても幸せは生まれない。だから、法律的に裁きましょう。」 身をもって知ったことだから間違いない。 けれど、レオは納得いかないようで、ドンっと机を叩いて叫んだ。 「そんな、そんなことだけで腹が治るわけないだろ!お前にはわかんないだろうけどさ!」 「そうですね、こんだけ横暴なことしてるなら他にもやばいことしてるでしょうし。そして、死刑まで持っていけると思います。で、証拠突きつけて絶望した顔に一発でも殴ってやればいいです。」 ニヤリと笑って提案する。 「…その顔はズルいし…分かった。俺はどうすればいい?てか、お前手伝おうとしてんのか?そんな弱そうなのに?」 最初の方が聞き取れなかった。 まぁいいかと思いながら質問に答える。 「まずは証拠集め、ですね。あれ、なんて言う領主でしたっけ?」 「確か、ヴァルド・ガリマウス子爵だよ。」 「じゃあ、早速乗り込みましょう。」 立ち上がってドアを開けようとしたらレオに腕を掴まれた。 「ちょ、待て、待て。計画は?」 当然、僕が乗り込むに決まってる。 「レオは、僕を領主の元へ貢物として運んでください。あと僕の荷物を預かってて欲しいです。あとは僕が証拠を探してきます。」 「はぁ?なに言ってんの?そんな細い体でどうしようって言うんだ?俺もついていく。そもそも、お前のこと信用してないし。」 「…多分僕が一人の方が効率的です。」 「ハア?なに言ってんの?多分ってナ ニ。ちゃんと計画立ててから物言いなよ。ちょっと来い。ばあちゃんまたね。」 「レオ…無茶だけはしてはいけないよ。」 「大丈夫だよ。ばあちゃんは待ってて。 着いてこい。」 なんか、少し面倒になってきた。絶対一人でやったほうが速いのに。 まぁいいや。 僕が持つものは、少しの怒りとほんの偽善だけなのだから。
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