第三者視点

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第三者視点

日本では王子来航騒ぎも少し落ち着き始めていた。 当の王子はとあるカフェを訪れていた。 「久しぶり。レイデェル兄さん、クレハランド殿。お元気そうで。」 「お久しぶりです。殿下。殿下はほんの数年で凛々しく成長なさりましたね。大変嬉しく思います。」 クレハランドこと、クレハは普段の様子とは違う姿を見せていた。 長い髪を結び、キリッとした顔つきで膝まづき手を固く結んで最上級の礼をした。 遅れてやってきたレイデェルこと嶺 は、コーヒーとタルトをレオンハルトが座っている席のテーブルに置いた。 「…久しいな、レオン。お前も元気そうで何よりだ。クレハ、気を使うな。楽にしろ。」 嶺に言われてやっとクレハは肩の力を抜いた。 「兄上。いつになったら帰ってくるのですか?臣下は首を長くして待っていますよ。」 「はぁ、…お前も堅苦しい喋り方をするな。王太子はおまえだろう?」 嶺は自ら王位継承権を放棄し、国に対して大きく貢献しその報酬として印番であるクレハとの平穏な生活を望んだ。 「おかげさまで、ね。全く、僕こそ王位を兄上に押し付けられると思ってたのに。僕も優秀だけど兄上には敵わない。」 レオンハルトは態度をコロリと変え、愚痴を漏らす。 上品にタルトを口に運び、甘いものが好きなのかレオンハルトはペロリと食べ尽くした。 「そういえば、レオン様は印番探しでしたっけ?」 クレハは嶺の隣に座り、あえて聞いた。 「そうそう。シュナイザーに占ってもらったら此処にいるって。しかも実際会えたし。」 「そうか。連れて帰るのか?」 嶺はその相手がもう此処にはいないことを知りながら聞いた。 心の中では笑いながら。嶺は生意気な実弟より、可愛いルーの味方だ。 「それがさぁ、もうこの国にはいないんだよ。この前魔法使う許可を貰って調べたけどこの国にはもういないって。」 「なぜ顔を合わせた時に連れて行かなかったのですか?」 「なーんか、認識条件の合わなかったんだよね。気付いたの少し後で痣が変わっているの見て気付いたんだよ。」 なんで逃げられたのかなぁ。と呟くレオンハルトを余所に嶺とクレハは安堵した。 「え、なんで二人ホッとしてんの?ヒドイ。」 「…いや、お前が俺の様なことしなくて良かったな、と。」 「ふーん。」 レオンハルトはカップの中を眺めながら早く会いたいとぼやく。 そんなレオンハルトを見ながら二人は複雑な気持ちを感じた。 「レオン、いつか、その相手と会って、思いが通じ会ったのならここに連れてきておいで。楽しみにしてる。」 全てはあの子次第なのだと思う。 「じゃあ、僕は二人の子供を楽しみにしてる。」 レオンハルトの言葉に二人は赤面して固まった。 二人には、ルーが居たため、自分たちの子供はあまり考えていなかった。 勿論、そういう行為は毎晩の様に行なっているが、ルーのお世話でいっぱいだった。 迷惑というわけではなく、只々ルーが可愛くて構ってしまいがちだったわけだが。 「え、もしかしてそういうこと考えてなかったの?まぁ、二人の自由だけどさぁ。」 「ほっとけ。まぁ、確かにだが。」 「それよりも、レオン様、帰国なさるんですか?」 「うん、そのつもり。もうここに用はないしね。」 「そうですか…嶺が悲しみますね。」 そんなことねぇよ…と何気にひどいことを漏らす嶺。 日本での穏やかな最後の日を過ごした。
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