主人公視点

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主人公視点

今、僕はガリマウス子爵の屋敷に潜んでいる。 …メイドとして。 なんか、ガリマウス子爵、思ったよりも気持ち悪い。 常に他のメイドや町の若い女をいたぶって楽しんでる。 その姿を見るたびに昔のことを思い出して心に黒い靄がまとわりつく。 はぁ、さっさと終わらせるか。 あいつには悪いけど、計画なんて気にしてたら僕が危ない。 掃除道具を持って、屋敷を練り歩く。 古ぼけた塔の中に図書館を見つけた。 埃っぽいわりに床の中心部だけ埃がなかった。 その上、ある一箇所から風と一緒に呻き声が聞こえる。 「此処は、隠し牢か…。本棚の裏とか、王道すぎ。」 隠せてないな、と呆れながらも本棚の上から三段のところの明らかに他のものと質も色も大きさも違う本を押し込むと想像通り隠し通路が出てきた。 まっすぐ五メートルほど進むと階段が下へ続き、水滴が落ちる音と男と女の呻き声が聞こえる。 カビのような匂いと微かな欲望の刺激臭が鼻腔につんざく。 先を進むと牢が両側にあり、死んだ目をした裸の女たちが中に入っていた。 今、外に出してもダメだからさらに奥へ進む。先には、男と女共同の広めの牢があり、中は甘い匂いが漂ってる。 「…チッ。気色悪いことしやがって。」 僕にとっては嗅ぎ慣れた匂いで、此処に近づくだけで普通の人ならこの匂いに毒される。
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