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さらに奥に進む。
奥に行くに従って、甘い匂いは強く、濃くなっている。
そして、声は媚びるような甘い声に変わっている。
「ここか。」
ドアの向こうから声が漏れ出ている。
『カレン、おぬしは可愛いのう。ほれ、おお、ここは敏感だの。」
『アアァン、ご主人様、もっとぉ〜。』
『ご主人様〜、私にも構ってください〜。アンナ悲しい〜。』
『おお、そうかそうか、さみしかったのか、すまんのう。今から可愛がってやるからの。』
ここの奥にいるのは、賢い女か、弱みを握られて従っている女だろう。
支配者に早々に媚びを売るのも一つの手段。
僕もそうやって生きていた。
「まぁ、もうそんなの御免だけど。」
呟いて、ドアを開ける。
中の光景は、僕の過去を心の奥底から引きずり出すのに十分で、冷めた怒りで、自分でも怖いほど勝敗はすぐについた。
冷静かつ迅速に、ガリマウス子爵だけを氷柱にした。
汚らしい格好で時が止まり、周りの女は目を見開いて驚き固まっている。
「もう少し待ってて。」
女の中の一人が頷いたのを確認して、その部屋の本棚から無防備に置かれている悪事の証拠らしき物を集めて水柱に貼っておく。
奥にドアがあるのを見つけてドアノブに手を伸ばした。
「あ、貴方、そこへは行かない、方がいいわ。」
「ええ、その奥にはこいつの雇った男たちがこいつに無礼な態度をとって捕まった人達が…」
忠告を無視して、ドアノブを回した。
「ギャハハハハ!おい、嫌とか言っといてなんだこの様は。痛いのがイイのか?」
「おい!なんだテメェその目は!」
「ギヤカ、目を潰してやれよ。少しは大人しくなるだ、ろ!」
辺りは血で赤く染まり、人間だったものには蝿がたかっていた。
その中の似た顔の二人が暴力を一方的に受けていた。
でも、その瞳は輝きを失うことなく、男たちを睨みつけていた。
目を潰すという言葉を前に初めて怯んでいるようだ。
「ゃ、やめ、ろ!イチに手を出すな!」
片割れが片割れを守るように寄り添った。
「じゃあ、お前でもいい。お前にしてもいいのならそっちに手は出さない。」
「ハハッ、そりゃいい。片目ずつでもいいんじゃね。」
「おい、まて、抉って売ったら物好きのジジイが高値で買ってくれる。コイツらは気色の悪い色をしているが、珍しいから高くなるぞ。」
片割れの両手両足を二人で押さえて、残りの一人が顎に手を添える。
右手には金属の棒が。
片割れの右目に棒を添えて、ニヤニヤと笑った。
「はぁ、ホント気持ち悪い。…くたばれ。」
何故、よりにもよって僕の過去と少しかぶるんだ。
イライラが止まらない。
また、氷柱を作った。
三本の柱には、欲望に溺れた馬鹿なハイエナが埋められた。
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