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「どうした?ルー、大丈夫か?」
急に黙り込んだ僕の頭を撫でてくれた。暖かい。
感傷に浸った心が少しだけ救われたような気がして、少し、口角が上がったような気がした。
「…嶺さん、ありがとう。大丈夫です。」
そう言うと、嶺さんは、
「そうか…ルー、よく聞けよ。金はいらない、いつも言ってんだろ。あの時の礼と、償いをさせてくれって。それに、お前は…なんか、こう、家族みたいなものだと思ってるんだ。俺も、クレハも。」
と、ホッとした顔をしてからキリッとした顔で、言ってきた。
「そうよ、ルーちゃん。嶺くんが照れながらも言ってくれたの。イエス以外の返答は受け付けないわよ。」
クレハさんは、僕と、嶺さんを同時に抱きしめた。
てか、嶺さん照れてたんだ。分からなかった。
「でも、僕は何時も二人に助けてもらってばかりいます。嶺さんの言う、礼と償いだって、十二分にしてもらってます。そもそも、あれは…「「ルー!(ちゃん)」」…わかりました。お言葉に甘えさせてください。その代わり、僕に何かできることがあったらやらせてください。」
「あっ、じゃあ一つお願いしてもいいかしら?」
クレハさんがニコニコしながら言った。
「なんですか?」
「敬語を取ってほしいなぁ。」
「え、なんでですか。もう癖みたいなものなので無理です。」
もう、誰にも心を許さない。
必ず敬語で話すことを決めている。
言葉の壁は、絶対壊さない。
「しょうがないわね。ルーちゃん、気が向いたら気軽に話してね?」
「はい。ありがとうございます。…ごめんなさい。」
「ふー、じゃあ午後も頑張ろっか、よろしくね、ルーちゃん。」
あと少しの間、一生懸命仕事をこなそうと気を引き締めた。
「はい、よろしくお願いします。」
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