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第1章
窓から溢れる淡い光に、目が覚めた。
のそりと立ち上がり、洗面所に向かう。
成人前の男が一人住むだけにしては無駄に広いマンションの一角。ものが少な過ぎるのも相まって、更に広く感じる。顔を洗い、歯を磨く。適当な服を着てカメラを持って外に出かけた。
空を見上げカメラを構え一枚撮った。
習慣になってしまったこの行動に特に意味はない。ときどき、ブログにあげたりしているだけ。
まだ早い時間帯だからか、人は少なかった。だから油断していたんだ。カメラに記録された写真を見ながら歩いていたら、
ドンッ!
『ごめんなさい、怪我はないですか?』
軽く吹っ飛んで痛いお尻は無視して、カメラの安全を確認していたら、英語で話しかけられた。
その声を聞いただけで気持ちが高揚した。
バッと顔を上げると、其処には美しい顔があった。王子様、この言葉が一番しっくりくる。
ああ、ダメだと思った。
自分と彼との関係が出会った瞬間にわかってしまったのだ。
この世には、[運命の印番]というものがある。
それは、ごく稀に体のどこかに何やらかの形をした痣を持って生まれてくるものがいる。
性別など関係なしにこどもを孕ませたり、孕んだりすることができる。
しかし、それは一人、つまり運命の相手とだけだ。男と女のペアはもちろん、男と男、女と女の組み合わせもある。
共通することは、対になっている雌の印痣と雄の印痣がそれぞれにあるということだろう。
その痣が、僕にもあるのだ。黒い歪んだ何やらかの痣が。
普通、この広い世界の中から運命の一人を見つけ出すことは不可能に近い。
だから、痣は進化したらしい。
運命の人と出会い、
目を合わせるや、
触れ合う、
言葉を交わす、
などといった条件を満たすと、それぞれの歪な痣は色づき、形も整っていくという。
最初は、形が形成され、次に色が変わる。
それに気づいた当人たちは運命に気づくことができる。
普通段階的にきづいていくものだけど
稀に僕みたいにに相手の雰囲気や匂い、
夢での予知ですぐにわかる人もいる。
そんなわけで目の前の人が運命の印番だと思っているわけだけど、僕は気づかれないようにしたい。
で冒頭に戻る。
『ごめんなさい、怪我はないですか?』
言語が昔から異常に上達するの早かったのは、運命の所為か。
一人合点しながら取り敢えず、うなずいておいた。
そして自分で立ち上がり、彼に向かって一礼して速足でその場を立ち去った。
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