君の声を聞きたい

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『みさきさんはいくつ?』  訊かれたので、ペンを借りた。 『翠さんの一つ上です』  ペンを返すと『さん』を二重線で消された。『君』に訂正される。男の人にでも『さん』をつける。女の子と間違われることにかなり抵抗があるようだ。 『みさきって、どう書くの?』  ペンを受け取り、漢字を書いた。 「もう一本持ってくる」と、片桐さんが席を外した。 『好きな花は?』  翠君が私の前にペンを置いた。最初に浮かんだ『タンポポ』を書いたが、好きなのは花ではないかもしれない。『綿毛がかわいい』と書き足した。  翠君が、私の書いた文字をじっとみている。突然立ち上がった。走って廊下の方のドアから出て行った。  入れ替わりで片桐さんが戻ってきた。 「翠は?」 「怒らせたみたいで……」  片桐さんは「タンポポで?」と、納得いかない顔をした。二人で顔を見合わせて首をかしげていると、翠君が戻ってきた。 「そういうことか」  片桐さんが呟いた。「好きにさせてやって」と、私の肩をポンと叩いた。
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