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ワンルーム8畳のゆったりとした自室に戻ると、菜々美はふうっと一息をついた。明かりをつけて木目調のこたつ台に鉢植えを置くと、愛おし気に撫でた。家の中に花があるだけでも、なんとなく安らいだ気持ちになる。 「可愛いわね、あなたって。」 思わず、花に向かって話しかけてしまった。しかし、植物も話しかけた方が良く育つという話があった気もする。しばらく、会社の愚痴やどうでもいいことを聞いてもらおうか、などと思った。なんとなく相棒ができたような気分に菜々美はなった。  あの店主が言うには、風通しの良いところに置くようにということだったので、ベランダがいいだろうか、と思ったが今日一日ぐらいは、家の中に置いておくことに決めた。靴や手帳やマグカップに一目ぼれするように、菜々美はこの花に夢中になっていた。
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