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会場中から沸き起こる拍手につられ、涼子も大きく拍手をして壇上を見つめた。
「ありがとうございます!」
登壇し頭を下げた悠に、司会者が
「一言どうぞ」
とうながすと、彼はちらりと涼子を見てほほ笑んだ。
「この賞は、僕だけじゃなくて、共演者や、スタッフの皆さんとか……。それから一緒に夢を追いかけた仲間がいたからこそもらえたものだと思います。本当にありがとうございます」
再び沸き起こった拍手に合わせて、先ほどより力強く拍手をしながら、涼子は5年前のことを思い出していた。
あの頃、悠は涼子と同じ事務所でアーティストを目指していた。まだ18歳の二人は、いつも夜遅くまで夢を語り合った。
「俺は絶対、武道館公演を目指す!」
「ベタだねー」
「じゃあ、涼子は何を目指してるの?」
口を尖らす悠に涼子は少し悩んで答えた。
「私は……世界中の人を幸せにできる歌を歌うこと」
「でたー!曖昧かつありがちな夢」
「何よー」
頬を膨らました涼子の頭をポンっと触り
「良いんじゃない?涼子らしくて。素敵な夢だよ」
と悠は頭をわしゃわしゃと撫でた。
二人とも希望に満ちていた。夢を叶えるためにがむしゃらだった。
あの時に戻れたら……。
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