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「涼子?おーい!涼子!」
はっとして涼子が顔をあげるとそこには悠が立っていた。
「あれ、悠?挨拶は?」
「えー……?涼子いったい何分ぼーっとしてたの?もうとっくに全員終わったよ」
トロフィーを握り呆れたように言った悠の言葉に驚き、涼子は周囲を見渡した。確かに会場はもう談笑の雰囲気だ。
「ごめん。ちょっと考え事してて」
「何考えてたの?」
「えっと……」
ちらりと横の方を見た涼子はとっさに
「ローストビーフおいしそうだな、って」
と近くのテーブルを指さした。
「え!?どんだけお腹すいてるの?あっ……涼子、この後あいてる?」
「えっ?あいてるけど」
「じゃあ、ちょっと外でご飯食べない?久々に会えたしおごるよ」
「いや、でも……」
悩む涼子の耳元に近づくと、悠は小声で
「ここよりおいしいローストビーフ、食べられる店知ってるんだ」
とささやき、にやりと笑った。
そのいたずらな表情に懐かしさを覚えた涼子は
「じゃあ行く」
と小さくうなずいた。
「じゃあマネージャー巻いて車出すから、5分後に駐車場で待ってて!」
そう言って無邪気に走っていく悠の姿は、あの頃とちっとも変わっていないように感じた。
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