青き日の夢

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車を降りるとひんやりとした風が吹いていた。 「んーやっぱ、海辺はちょっと寒いね」 慌ててコートを着た涼子に 「そりゃそうだろう。真冬にふ頭に行こうなんていう奴いないぞ」 と悠はため息をついた。 「えー昔はよく来たでしょ?ここなら大声出しても誰にも怒られないから」 「そうだったっけ……」 コンクリートにあぐらをかくように座った悠を見て 「その服高いんじゃない?」 と涼子は心配そうに言った。 「昔はよくこうして座ったろ」 「覚えてるんじゃない」 何も答えず遠くの方でちかちかと光る夜景を見つめる悠に、涼子はぽつりと言った。 「悠、本当はなんで音楽やめたの」 一向に表情を変えない悠に 「私に嫉妬したなんて嘘でしょ?」 と続けると、彼はふっと笑い 「嘘じゃないよ」 とだけ答えた。 「嘘。だって悠の方がずっと才能があったもん」 「才能?そんなもんないよ」 「あったよ。曲だって湧き出るみたいにどんどんできて、どれも良い曲で……」 「涼子に彼氏ができるまではな」 遮るように言った悠の言葉に、涼子は言葉をつぐんだ。 「気づいてなかった?俺の気持ち」 「何言ってるの?」 「なんでやめたのって、自分から聞いたんだろ?逃げるなよ」
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