青き日の夢

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おもむろに立ち上がった悠は、涼子に近づき、後ずさる彼女の頬をそっと触った。 「好きな人が、他の人のものになったら、何を書いて良いのか分からなくなった」 手の熱がじんわりと頬に伝わり、うつむいた涼子を見て 「そういう顔させたくなかったから本当のこと言えなかった」 と悠は苦笑して手を離した。 「私のせい……なの?」 「違うよ。失恋程度で曲が書けなくなる俺が弱かっただけ。世の中いっぱいいるだろ?失恋を歌にしている人たち。あっ、涼子も書いただろ?俺が事務所辞めてすぐ。その曲聴いた」 「うん……。彼とは結局うまくいかなくて」 「そっか」 ポケットに手をつっこみ笑った悠の吐く息が、白くふわっと広がった。 何かに気づいたようにポケットから手を出した悠の手には青いバラが握られていた。 「涼子、青いバラの花言葉って知ってる?」 「花言葉?知らない」 「夢、かなう」 「夢かなう?」 悠と同じように自分のポケットからバラを取り出し、涼子はじっとそれを見つめた。
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