4人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ。今回は紫のチューリップで」
「またチューリップ!」
「色で印象変わるし、花言葉も変わるんだよ。本当は『愛の告白』って意味の赤が最適なんだけど。紫は『不滅の恋』って意味で、まぁ告白に使えないわけじゃない」
「へー。そうなんだ。紫は、彼女のイメージに合うから全然オッケー!」
尊のゴーサインが出たので、すぐに花束を作り始める。
作業の間、店内をうろついていた尊だったが、すぐに飽きたのだろう。結局、俺が作業しているカウンターに近づいてきた。
「今回は、上手くいく気がするんだよなぁ」
「そうか。頑張れ」
「……なんでお前はそんなに非協力的なんだよ」
「今メチャクチャ協力してるだろ」
「そういう態度の話だよ」
いつもお前の恋に、付き合わされているからに決まっているだろう……言い返そうかと思ったが、飲み込む。
どうせ言っても通じない。こいつは、昔からこういうやつだ。変にビビりで、こちらが強く出るとまた気づいてしまうだろう。
尊を無視し、目の前の作業に集中する。
形がまとまったところで、俺はカウンタの裏にある鉢から、白と薄紫に咲いた花を取り出した。
「それなに?」
「これは私物。商品じゃないけど、バランス取るのに良さそうだから」
「あのー、お値段上がります?」
「だから商品じゃないって。金は取らない」
「助かるー。それで、それはなんて花?」
少しだけ、返事をためらってしまった。
「リナリア。これは花弁があんまり大きくならないやつだから、主役のチューリップを邪魔しないと思う」
「色々考えて作るんだな」
「そうだよ。色々、考えてるの」
最初のコメントを投稿しよう!