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選ばされた選択
「今年はあなたが選ばれました!」
目映い閃光が飛び交う会場で、彼はスポットライトを浴びながら、これまでにない大きな賞賛を享受していた。中学生とは思えないその切り口は大人の審査員全員が感動したほどであった。
彼は表彰された後、自身の作品を隣にその思いの丈を語りだした。
「このような…栄光ある賞を頂きありがとうございます。誰でも良かったというわけではなかったのですが、一瞬の輝きを収めるには彼女しかいなかったんです。僕にはそれほど力はありませんでしたが、それを成し遂げた時、大きな力を掴んだ喜びを噛み締めることができました。水面に映りこんだ彼女のあの笑顔を僕の作品に収められたことは最後にして最高傑作だと思います。」
■最優秀賞 白湖中学校2年 久保 彩光
作品名『少女の好きな飴玉』
その会場には絵画の少女に似通った写真を左手に強く握っている女性の姿があった。
右手はポケットに入れたまま、彼女は彼の栄光を鋭い眼光で見つめていた。
目には涙を浮かべ、彼と目が合うたびに彼女は視線を逸らしていた。
彼と彼女は式典が終わると、報道関係者を遮り、奥の方へとそそくさと消えていった。
___それから数日後…
母親と息子が自宅で殺されるという恐ろしい事件が起きた。争った形跡もなく、金品なども盗まれてる様子は無かったらしい。息子は自分の部屋で絞殺され、母親は腹部を刺されての失血死であった。犯人像の洗いだしや物的証拠など現在捜査中である。
時間ばかりが非情にも経過するだけで、事件の進展は何もないどころか容疑者の名前さえも上がってこなかった。
ここで、ある刑事が見つけた情報の一つを開示しよう。
母親の寝室のゴミ箱には故意的にバラバラにされたプリント紙が破棄されていたのである…。
その刑事は何とか貼り直しを試みたところ、
そこには四人の人物が映っていたようだ。
成人男性、成人女性、男の子、女の子。
また、文字も一緒に書き込まれていたようであり、かろうじで解読できる部分があった。誰の筆跡であるかは調査中だ。
『行…不明…保険…光…こ…故…わた…のせい』
この話には一貫性がある。
一体、誰が何を選び、選ばれてしまった結果なのだろうか…。
あなたを選んだ理由…その理由は深い闇の中に眠っている…。
【終】
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