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仕事休みの土曜日、彼の家に歩いて行く途中で、La floraの前をうろうろしている少年を見かけた。入ろうか入るまいか悩んでいるようだ。店主も店の中からチラチラと少年を見ているようだ。菜々美もついでに彼の家に飾る花でも買っていこうかと思っているところだったので、つい声をかけてしまった。 「君、花好きなの?ちょっとだけ入ってみたら?」 「へ?あ、あの・・・」 菜々美の方を振り向いた顔を見ると、遠目で見るよりも幼く、朴訥な顔立ちをしている。あどけない顔立ちとは裏腹に、髪型は今風のツーブロックにワックスでワイルドに散らしている。花の頭から頬にかけて点々とそばかすがあるのもなんとも思春期の男の子らしい。 「あの、こんなところに花屋なんてありましたっけ・・・?」 きょろきょろと店の周りを見回しながら、ハスキーで高めの声で尋ねる。 「私も最初はそう思ったのよ。君、高校生?学生の男の子で花が好きなんて珍しいね。」 「あ、はい。今日友達と待ち合わせしてて、その途中なんですけど。この花屋がいきなり目に留まって・・。」 「あら、友達に花でも買っていってあげたら?」 そばかすのある顔を急に赤く染めると、恥ずかしそうに言った。 「花なんてそんな・・・約束してる友達って男ですよ。僕、それにもう遅れそうなんで、行きます!」 「あ、ちょっと・・・。」 せめて名前でも聞こうとする菜々美をわき目もふらず駆け出して行った。 キイと音を立てて、店長がひょっこりと顔を出した。西風と書かれた銀色のネームプレートがえんじ色のシャツにキラリと光っている。ぺこっと菜々美に向かって微笑みながら会釈をしてきたので、軽く頭を下げ返した。
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