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 それから、その子は学校帰りや休日の日にちょくちょく顔を出すようになったという。孝太郎という少し昔風な名前だということも店主から教えてもらった。  とにかく、菜々美が花屋の交差点を通りかかるころには、高校生の出歩くような時間ではないし、休日は彼と過ごすことが多いので、菜々美が会うことはほとんどなく、ただ店主から今日はどの花を買っていったとか、今日は冷やかしに来ただけだった、とかそんな話を聞いた。  若い子が花屋に入り浸ることを考えると、なんだか微笑ましい気持ちになる。今時の子が-と言っても菜々美も20代を出ていない若者だったが、高校生に比べるとさすがに老けて感じる。―どんな花を見てうっとりするんだろう、とか彼女かお母さんにでも買ってあげたりするのかしら、と考えるだけでウキウキした。
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