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 いつまでも遠くにいられると思っていた。彼の頭上より高いところに、背筋を伸ばして行儀よく座り続けられると思っていた。  私の姿は誰の目からも詳しく視えない。私の肌のキメ、青白い血管の数、ちくちくと点在するホクロ、そして私の目の中で渦巻いている得体のしれないものに、誰も興味がないと思っていた。  望月は私に、目を覗き込んでもいいかと尋ねたことがある。そのときの私は、彼がどうしてそんなことを尋ねるのか、不思議に思った。構わないと答えると、その望月のひやっこい顔が徐々に近づいてきた。彼の輪郭がぼやけ、私はその肌のごく表面を覆う微弱な熱に、やけどしそうだった。  私はその時に、人から目を覗き込まれることは、同時に私が人の目を覗き込むことになるのだと初めて気が付いた。まるいお月さまがふたつ、私の目のくぼみを潤ませたあの無重力の暴力。世間知らずの私はちっとも抗えず、たくさん怯え、そしてふるえるほどに傷ついた。
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