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結貴は、美術室の真ん中でぐるりとあたりを見渡す。うねる彼女の長い黒髪の渦が、結貴自身を飲み込むように見えた。それから彼女は、教卓へと歩き出す。
「あとは、そうだね。顧問から指示が来るかな。美術展に行ったり、外に絵を描きに行ったり。まあ、顧問はこの古くさい美術部にまったく興味ないから、そんなの従わなくていいし、大体のことは二人で決める形になると思うよ。自由にやって。二人しかいないんだし。そんで、部長は望月に継いでもらうから、よろしく」
結貴の言葉を聞いた望月は、大きなキャンバスを運んでいた手を止めて、驚いたように顔を上げた。そして、知っていたとも知らなかったともつかぬまばたきを結貴に返す。
結貴は何か言いたげな望月を気にも留めず、黒板の隣に掲示してあるカレンダーを指差した。その近くに、紙が二枚貼ってある。新入生への部活説明や、入部届の提出方法が書いてある様子だ。
「一年生が来たらあの紙を渡せばいいから。来ないとは思うけれど、もしも、新入生が来たら仲良くしてあげてね。私は、新入生と喋れないから」
結貴は黒板の前に立ちながら、悪びれる様子もなくそう言いのけた。
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