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 結貴は、正面に来た彼の顔を見ながら、私を指差した。 「入るって。望月と同じ二年生。流石に分からないか。二十クラスあるし」 「うん。私は望月くんを見たことない」  私は結貴の言葉に頷いた。ひょろりとした望月のことを眺めても、その姿は記憶にない。  学校指定の白いワイシャツに、カーキグレーのセーター。指定の濃いグレーのズボン。かかとを潰していない上履きに、染めてない髪の毛。  形だけの校則を無視する派手な格好の生徒が多い中、彼は生徒手帳に書いてある規定をゆるく指でなぞるように守っているように見えた。今時、学校指定の黒色のセーターを纏うような生徒は真面目すぎて、逆に目立ち、彼のように指定外の無地のセーターを着ているほうが、周囲に溶け込むのだ。  個性を強調し、飾り立てる生徒が多い中、彼の見た目は一切目立つところがない。彼の特徴を強いて言うならば、その可愛らしい女の子のような顔立ちと白い肌だけで、私は彼のことを知らなかった。  しかし、望月は私のことを知っていた。 「僕は見たことあるよ。美香さん」  望月は私に微笑みかけた。 「なんで?」  私は驚いて、声が上擦った。
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