第一夜  さざえ堂の夢語り

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語部氏の語り 続きます 「豆志乃さんが高校生の頃にですね 彼氏とデートで I 津W松のI盛山へ遊びに行きまして。  ああ。ここは有名な白虎隊士自刃の地なんですが 名所として さざえ堂という建物があるんです」 「ぇっ? アニメで有名ないその家ゆかりの建物ですか?(笑)」とマスターが茶化しつつ つまみの乾き物 クラッカーとチーズ そして 子安氏注文の品 シェフのきまぐれサラダ(いろいろカラフルな豆類が入ったもの)を カウンターに置きます 「さざえ堂ってとても興味深い建築物でしてね 巨大なさざえの貝殻を縦に置いたような建物  そして内部に二重螺旋の坂道が入り口から堂の天辺まで続いていて そのまま同じ道を通らずに出口へと繋がってるんですよ つまり入る人と出る人がかち合わないような設計がしてあり 内部の壁には美術館のように展示がしてあるんですよ」 「二重螺旋ですかぁ 確かに面白い形した建物ですね」と 打越氏 スマホで検索しては 子安氏に見せています。 「はい 以前は内側の壁には宗教的な輪廻転生の絵画が描かれていたとか言われてますが  まぁ 豆志乃さんと彼氏が入った時は 白虎隊関連の絵画が展示されていたそうです。  それで その彼氏っていうのが美術部長で 絵画には目がなく 最初は豆志乃さんも一緒に絵を見ながら螺旋を登っていたんですけどね 彼氏が延々と絵画に目を取られては 豆志乃さんとあゆみが合わなくなり 彼氏が遅れてしまったんですね」 「白虎隊関連の絵画ですか 浮世絵 いや 明治だから 違うのかな?」と 打越氏 ひとりごと 「おそらく浮世絵の流れを組むものだったんでしょうね 明治には絵新聞とかもあって 今の新聞と違いドラマチックに誇張して描いたものもあったようです。   話を戻しますが 結局 豆志乃さんが先に出口まで来て彼氏の出てくるの待っていたそうです。 ところが いくら待っても彼氏が出てくる気配がなく たまたま さざえ堂の係の方がいらして 中で倒れたりしていないかと確認をとってもらったそうです。 が その方に入り口から出口まで見てきてもらうも 彼氏はいなかったとか 」 「それって 彼氏は入り口から外へ出ちゃったんではないんですか?」と子安氏が 訊きます。 語部氏 首を横に振って「いやそのさざえ堂の入り口から出てきた人はいなかったと確認もとれています。 つまり豆志乃さんの彼氏さざえ堂内より消えてしまったわけですね」
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