序章  バー夢幻にて

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 年の暮れ 町ではクリスマスツリーが門松へと変えられて 暮れの慌ただしさが 夕暮れ時 歩く人々の表情を忙しなくしている 東京の西外れにある九恩寺市(くおんじし) 盆地特有の夏は暑く 冬は冷えるここ九恩寺は 都心の報道局が雪の予報が出ると 九恩寺駅前に集い「九恩寺では何センチ積もっています」と毎度 ニュースで繰り返される そんな街 九恩寺駅北口から とぼとぼ歩くと 黒板塀に囲まれたちょっとした粋な一画が ここは 都内では珍しく 芸妓さんをお座敷に呼ぶことが出来る町 いや 小さな一画 その一画よりさらに奥に進むと 袋小路に佇む 「バー夢幻(むげん)」 僅か数名で満席に成ってしまうカウンターのみのバー 今夜も 常連客か? 二名30代半ばの男性客が 樹の扉を引き 入って行きました
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