第六夜 九恩寺市遊廓の夢

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語部氏 いつものカウンター奥の定位置に座り マスターに「ジンライムとチーズとクラッカー とりあえずください」と注文 マスターから ジンライムのグラスをいただき  一鈴ねえさんと武豊ねえさんに 乾杯! 普段ならおしゃべりな一鈴ねえさんが すぐに話しかけてくるところが 今夜は 武豊ねえさんが和服の襟元ただしながら話し始めました。 「語部さんは九恩寺の花街や遊廓の歴史とか詳しいの?」 「いやぁ 私も九恩寺住み始めた頃に図書館でちょこっと調べたくらいですが。 黒板塀のこの一画は昭和30年代でしたっけ 繁栄したってこととA川沿いのT町遊廓が売春防止法でいけなくなったからでしたよね」 「T町行ったことあるかい? まだ遊廓だった頃の建物が残っているよ」と 遠い目で武豊ねえさんが言えば 「そうなんですね では今度見に行ってみます。 一鈴ねえさんは行ったことあるのですか?」 ケラケラと明るい声で笑いながら 一鈴ねえさん「まさか行ったことないですよ 元遊廓の建物ですか 武豊ねえさんは?」 「私の叔母に当たる女性が 遊廓にいたそうで話を聞いてねぇ 私は母に手を引っ張られて一度 近くの三味線のお店まで行った時 建物 外から見たことあってねぇ」 と なにやら 武豊ねえさんのちょっとした話が始まるようです。
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