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「バー夢幻」にて 室内カウンター席奥にいるのに 中折れ帽を被り黒いシルエットと化してる
語部 尽(かたりべ じん)氏
いつものように 語りを始めます。
「F島県のI津W松の奥座敷と言われる 東山温泉に三日ほど逗留したんですが。」
「文人墨客が湯治に行っていたとか 良いところらしいですね 以前知り合いが 川沿いの宿で心地いい時過ごしたって言ってましたね あっと 語部さん話折っちゃってすみません」とマスターが言えば
「いえいえ 別に私の講演でもありませんから 子安さんも打越さんも会話加わって構いませんよ」と 暗いシルエットの印象とは逆に人懐こい話し方を語部さん 続けます。
「まぁ 川沿いの宿に私も泊まりましたよ でも この師走の冬風の吹くなかでしたので 浴衣に下駄でからんころんでもなく温泉上がっては ホテル内のラウンジバーで軽く頂くってな 有意義な時過ごしてたんですよ」
「それはうらやましいですねえ 我々サラリーマンじゃぁ週末一泊 H根とかA海あたりですからねえ 打越先輩」
「まぁな あとは年末年始なんざ 特別料金で家族サービスもできやしないな あはは 失敬 愚痴っててもあかんですなぁ」
「まぁ そこ 東山温泉って言うところは 九恩寺のこの一画のように 芸妓さんを呼べる三業地でして ちょうど 私が一杯やってると 芸妓さん仕事終えて 軽く一杯やりにくるので いつの間にか 会話するようになってねえ そのうちの一人 豆志乃(まめしの)さんって若い芸妓さんから聴いた話です いや 彼女が直接体験した話ですね」
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