7人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
(花言葉を調べてるなら……知ってるよな?)
紀子の好みそうな花と、想いをシンプルに伝えられる花言葉……その両方を兼ね揃えた花を、周と二人で死に物狂いで探しまくった。
そうして見つけ出したリナリアに、オレは全てをかけた。
(頼む……気付いてくれ……っ)
祈るような想いで、紀子をじっと見つめる。
ふと、紀子が顔を上げた。そして微笑む。
ドキリと、胸が鳴った。
「……蝉川、ありがとう」
「え……っ」
「これ、今書いてるBL小説に使えそうだわ」
「…………へ?」
「ほら、男同士の恋愛っていろいろ難しそうじゃん。だから、こういうもどかしい感じの花言葉を探してたんだよね。でも、なかなかピンとくるのがなくて」
「えっと……紀子? その……『BL』っつった?」
「あぁ、ごめん。男子にはキモイだけか。いやさ、BLってすごい需要あるでしょ、腐女子とかに。だから、いっぺん書いてみようかなって思って。ウケれば課金とかもできそうだし」
「…………」
「蝉川、たまには良いことするじゃん」
紀子は軽くオレの肩を叩くと、そのまま踊り出しそうな足取りでマンションの中へと戻っていった。基本的に仏頂面の紀子が、珍しくめっちゃ楽しそうに笑っている。
「…………」
リナリアの花言葉は『この恋に気付いて』だ。
オレの恋には、いつ気付くんだろうな。
最初のコメントを投稿しよう!