生徒会室では言えないこと(生徒会室シリーズ4)

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「……えっと……何か、ごめん」 「気にするな。付き合いの長いお前には、いずれ話すだろうとは思っていたからな」 「…………」  全然知らなかった。  だって、そんな素振り、一度も……。 (いや……敢えて、見せないようにしてたんだろうな)  多分、互いに名字呼びなのもその一環だろう。  名字で呼ばれるのをあれほど嫌がる周が、それを受け入れているのだから。 「とはいえ、離婚したのは俺たちが物心つく前だったから、俺たちにはあまりその意識はない。ある日突然その事実を聞かされた時は、さすがに天地がひっくり返ったがな」 「ひっくり返るわなそりゃ!!」 「柴山は平常運転だった」 「怖えええええええ!!」 (もう少し戸惑えよ!! どんだけ周りに関心ないんだよ!?) 「まぁ、あいつの母親はその……クラブのママとかやってる人だからな。男女のいざこざとかは、柴山にとっては日常の一部に過ぎんのかもしれん」 「嫌だなそんな日常……」  本に没頭するのも頷ける。うってつけの現実逃避先じゃねぇか。  まぁ、紀子の場合は現実逃避とかじゃなくて、単に男女のいざこざに興味がなかったから、本に没頭したんだろうけど。 (でも、それってすごいことだよな……)  紀子は、周りの言動に振り回されない。周りで何が起ころうが、何を言われようが、あいつはただ、自分の好きなことに没頭し続ける。  それはきっと、確固とした自分が存在しているからできることだ。 (……全く。どっちが女子だって話だ) 「……なぁ、周。オレ、伝えるよ。この気持ち」 「蝉川、お前……」 「花言葉で」 「花言葉っ!?」 「ほら。あいつ今、花言葉を調べてるだろ。小説の題材にするとか何とかで」 「普通に告白すればいいだろ!? 言うまでもないだろうが、あいつは恋愛に関心が無い故に恐ろしく鈍いぞ!!」 「分かってるよ!! でもいきなり告るとか怖ぇじゃん!!」 「お前は女子か!!」 「もう女子でいいよ!! ちくしょう!!」  かくして、オレは貴重な土曜日を、野郎と共にネットで花言葉を調べることに費やした。   ***  そして、紀子の誕生日当日。 「……ナニソレ」 「何で棒読みなの!?」 「いや、だっていきなりお前が花束持ってくるとか、何か馬鹿なこと考えてるとしか思えないし」 「オレのイメージどうなってんの!? 今日お前の誕生日じゃん!! 18歳の!!」 「え……あぁ、そういえばそうだったわ」 「……紀子さ、何で毎年、自分の誕生日忘れんだよ」 「いや、誕生日って一歳老けるだけだし」 「もう少し楽しいこと考えようぜ!!」 「まぁ、とりあえず受け取っておくよ。ありがと」 「お、おう」  おずおずと差し出すオレの手から、紀子はひょいと花束を取った。 「でも、花束なんて随分凝ったプレゼントだね。これは……リナリアか」 「そ!! ほら、紀子さ……最近、花言葉調べてただろ? たまにはその……こういうのもありかなって」 「…………」  色とりどりの小さな花の集まりを、紀子はじっと凝視している。
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