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店内が少し騒がしくなって目が覚めた。どうやら俺まで眠ってしまっていたようだ。そろそろ始発の電車も動き出しそうな時間だ。サヨコはまだぐっすりと眠っていた。起こすのが申し訳なかったけれど、眠るならちゃんと布団で眠ってほしいから、肩を揺すって声を掛ける。
「サヨコ、そろそろ帰ろうか」
「あれ……煌太」
寝起きで状況が把握できていないのか、ぼんやりと視線を彷徨わせている。隙だらけの表情が可愛くて、思わず引き寄せてキスをした。
「目、覚めた?」
「……覚めない。からもう一回」
立ち上がろうとした俺の襟首に腕を回して、サヨコが唇を押し当ててくる。困らせてやろうと思ったのに、こっちが惑わされる。
「……満足しました?」
「まだ足りない。けど、我慢する」
「そうしてもらえると助かる。また今度、たくさんしよ」
今まで会えなかった分をすぐにでも取り戻したい気持ちもある。だけど、これからずっと一緒にいられるのだから、焦らなくたっていい。ゆっくり、大事に進んでいきたい。
「サヨコ、愛してる。これからもずっと」
おしまい
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