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映画館に入ると、来たことがないというのは本当だったようで、サヨコは目に見えてはしゃいでいた。少し暗い照明や近未来的な内装に、何度か来たことのある俺でも胸は躍る。
上映中の映画のフォトスポットがあるのを見つけて、映画の内容も知らないのにサヨコは写真を撮りたいと言う。恥ずかしいから俺は遠慮したかったのに、近くにいたカップルが親切にも撮影を申し出てくれた。
その写真で愛着が湧いたのか、サヨコはその映画を観ようと言った。運良くすぐ後の上映回があったから、すぐにチケットを買って座席を確保する。その間にサヨコの目はフードカウンターに釘付けになっていた。
「何か買う?」
声をかけると、サヨコは首を横に振る。それでもまだちらちらと見ているのが可愛い。遠慮しなくてもいいのに。
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