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「俺、何売ってるのか気になるから見てもいい?」
サヨコが小さく頷くのを確認して、メニューが見えるところまで進む。
「あ、あれ買おうかな。チュロス。サヨコはシナモンとチョコどっちが好き?」
「……チュロス?」
「あの細長いやつ。半分こしよ」
「えっと、じゃあシナモン」
チュロスとアイスティーをセットで購入して入場口に向かう。上映室に入る前にサヨコにチュロスを持たせる。俺はアイスティーを片手に持って、お互いに空いた手を繋いだ。指先の冷たい、いつものサヨコの手に戻っていた。
「暗いから気をつけて」
階段の下で立ち止まって、サヨコはすごい、と呟いた。別に俺が考えたわけでも、建てたわけでもないけど、初めて見る景色に感動するサヨコの隣で俺は何故か誇らしい気持ちになった。
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