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席に着いて、ふたりの間のドリンクホルダーにアイスティーを突っ込むと、それだけでサヨコは良くできてるわね、と感心したように言った。
「チュロス、食べてみなよ。あったかいうちに食べたほうがきっとおいしいから」
サヨコは嬉しそうに齧り付いた。聞いてるだけで涎の出そうないい音がして、これは上映中は食べられないな、と思った。サヨコは目をまん丸にしながら、こんなにおいしい食べ物があるのね、と言う。いちいち大袈裟で、でもそれがすごく愛おしかった。
「煌太も食べて」
そう言って目の前に差し出されたチュロスに噛みつく。サヨコが齧ったときみたいにいい音がしなかったのが少し残念だった。サヨコは二口目もおいしそうな音を出すから、きっとチュロスもサヨコに食べられて嬉しいのだと思うことにする。もう一口だけもらって、あとはサヨコにあげることにした。
「すごくおいしかったわ。煌太、ありがとう」
口の周りに砂糖をつけたまま笑うサヨコが可愛くて、すごくキスしたくなった。幸い、まだ人はまばらで、俺たちが何してようが誰も気づかない気がした。小さな声で呼ぶと、首を傾げて俺を見るサヨコに近づいて、下唇の砂糖を指で払う。俺の理性がきちんと仕事してくれてよかった。
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