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エンドロールが終わって、照明が明るくなるまでサヨコはずっとスクリーンを見つめ続けていた。こんなに一生懸命観てくれるなんて、監督もさぞ嬉しいことだろう。俺はだいぶ薄くなってしまったアイスティーを飲みながら、監督に嫉妬していた。
「煌太、一口ちょうだい」
カップを持ったままストローをサヨコのほうに向けると、その先端を咥える。目が合うと、ストローを咥えたままふふっと笑う。それだけでさっきまでの嫉妬なんて吹っ飛んでいった。俺の目の前でこんな可愛い子が笑ってるんだ。これを幸せ以外になんというのだろう。
映画館を出た後は、サヨコが行ってみたいと言っていた店に連れていかれた。なんてことのないカフェだったけれど、そこでもサヨコはきょろきょろとして、見るものすべてが特別なものだというようにうっとりとした顔をした。
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