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聞き慣れたチャイムの音で目が覚める。寝ている間にだいぶ汗をかいたらしい。パジャマ代わりのTシャツはぐっしょりと濡れていた。少し熱が下がったのか、重たかった身体はふわふわとして、むしろ重力を感じない。
ゆっくりと玄関に向かう間にもチャイムはしつこく鳴り続けていた。覗き穴から外を確認すると、佐原紫が立っていた。彼女は会社の先輩だ。恋人などではない。
扉を少し開けると、すかさずその隙間に指が引っ掛けられる。
「石崎くん、大丈夫? どうせ何も食べてないんでしょ。何なら食べれる? いろいろ買ってきたけど」
扉を勢いよく開けられ、外に飛び出しそうになった。
「大丈夫じゃなさそうね。お邪魔するわよ」
佐原は俺の背中を支えながら部屋に入ってくる。俺をベッドに座らせてから、手のひらをなんとも言えない表情で見つめる。
「汗、すごいわね」
「すいません、寝起きで汗やばくて」
ふらふらと立ち上がり、引き出しから別のTシャツを取り出す。びしょ濡れのシャツを脱いで、新しいものを着ようとすると、佐原に腕を掴まれる。
「体、拭いてあげる」
佐原は温かい濡れタオルを俺の背中に押し当てた。
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