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○ ☽ ○  佐原は話を聞くのが上手いのだと思う。ジョッキ一杯分のビールを空にする頃には、俺の今までの女性遍歴を洗いざらい話してしまっていた。佐原は表情ひとつ変えずに、俺に酒をすすめる。一杯どころではなかった。ビールはいつの間にか焼酎に変わっていた。  高校時代は結構モテたと思う。でも、俺はずっとサヨコのことが忘れられなくて、告白されても断ってきた。だけど、好きじゃなくてもいいから付き合って、と何度も気持ちを伝えてきた子に根負けして付き合うことにした。結局、二年も付き合っておいて、愛されている実感が得られないのが辛い、と一方的に別れを告げられてしまった。  俺としては彼女のことを大事にしていたつもりだったし、体重が五キロ減るくらいには塞ぎこんだりもした。後から聞いた話によれば、彼女は俺の他に付き合っている男がいたらしい。愛されていなかったのは俺だった。
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