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「私が、煌太に恋してしまったら、この関係は終わり?」
俺を見つめる佐原の瞳は揺れていた。すげぇ酔ってるじゃん。そういえば今日は随分とペースが速かった。
「どうしたの? 俺のこと絶対好きにならないって言ってたじゃん」
店員に声をかけて水をもらう。前提として、俺は佐原に俺のこと好きになるなと言った。そして、佐原もそれは絶対にないと言った。絶対になんて、そんな不確実な言葉を前提にしたのが間違いだったのかもしれない。
この関係の終わりについて改めて考える。俺か佐原のどちらかに恋人ができたら、片方は幸せに、もう片方は以前の不健全な状態に戻る(今も十分不健全だけど)。じゃあ、佐原が俺を好きになった場合は? 俺も佐原のことを好きなら、もうそれは付き合えばいいだけだ。なんだ、簡単なことだ。
「紫、俺のこと好きなの?」
顔を寄せて、そう訊ねれば佐原は顔を赤くして、口をパクパクしている。ほら、可愛いな。
「好きだって言ったら?」
「付き合うか、俺たち」
「え?」
テーブルの下でそっと佐原の手を握ると、返事をするようにきゅっと握り返された。
「ね、今日うち来るよね? 一緒に寝て」
「もう……しょうがないなあ」
俺は紫のしょうがないなあが好きだと思った。
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