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 紫と付き合い始めて、俺は毎朝起きるのが楽しみになった。会社に行けば、かなりの確率で紫に会えるんだ。もちろん仕事はちゃんとしている。予定が合えばお昼も一緒に食べに行けるし、金曜の夜は俺の家に紫が来てくれて、週末もそのままふたりで過ごす。俺は本当に幸せで、大学のころの友達にも連絡しては惚気てみたりした。随分遅れてきた青春だなって冷たくあしらわれたけど。 「煌太、明日どこか行きたいところある?」  金曜の夜、俺の家で夕飯を食べながら、翌日のデートの予定について話をする。紫は料理もすごく上手なんだ。俺が美味しいって言うと、紫も嬉しそうに笑ってくれる。 「俺、あれ行きたい。リアル脱出ゲーム」 「謎解きだよね。煌太、得意なの?」 「うーん、どうだろ。得意かどうかは微妙だけど」 「じゃあ行ってみようか」  会場近くでランチを食べて、午後の回に参加して帰る、というプランがよかったのだが、同じことを考えている人はたくさんいるみたいだ。お昼の後のちょうどいい時間の回はすでに『残席なし』で、仕方なく午前中の回のチケットを購入した。
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