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 ランチは近くのイタリアンに決めた。昨日の夜のうちに調べていて、焼きたてのピザが食べれるらしいし、レビューもまあまあ良かったから絶対ここにしようと思っていたんだけど。席について注文を終えると、紫はお手洗いに行ってくると席を立った。  こういう店に来ると、他の客が何を食べているのか気になってしまう。すぐ隣は俺が最後まで悩んでやめたピザを食べていた。写真より随分美味しそうで、ちょっと後悔した。そんな感じでぐるりと見渡していると、店内が少しざわついた。声を潜める感じで、一緒に来たパートナーとこそこそと話をしている。  入口付近に女優みたいなツバの広い帽子をかぶって、サングラスをかけた女が立っていた。その女は真夏だというのに、長袖なんか着ていたけど、真っ白なセットアップが決まっていて、むしろ涼しげな風が吹いてきそうだった。その女はそのままお手洗いのほうへと消えていった。  入れ替わりになるように紫が戻ってくる。 「今、すんごい美人に会ったよ」 「あ、全身真っ白の人? オーラがすごかったよね。顔見えなかったけど」
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