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一晩眠ったら、少し気持ちは落ち着いたような気がする。朝一番で紫に謝罪と楽しみにしているというメッセージを送っておいた。
昨日は酔っていただけ。疲れていただけ。紫のことが好きで、大切にしたいという気持ちは変わらない。それに、紫と俺はお互いの一番弱い部分を知っているわけだから、それでも好きでいられる相手というのはきっと他にはいないんだ。スマートフォンの待ち受け画面を確認する。こんな楽しそうな顔の俺はしばらく見ていなかったと思うな。ほら、やっぱり俺は紫といて幸せなんだ。
出社したら紫と目が合って、周りを気にしながら小さく手を振ってきた。
「おはよう。ごめんね、昨日変な時間に電話しちゃって」
「いや、なんか昨日は疲れてたみたいで寝ちゃってたんだ。ごめん」
あまりにもスムーズに嘘が出てきた。大丈夫? と顔を覗き込んできた紫に罪悪感を覚える。
「うちの布団、紫の匂いするんだ。だからかな、夢に紫が出てきたんだ。おかげで疲れなんか吹っ飛んだよ」
これは本当。詳細は思い出せないけど、紫が夢に出てきたんだ。すごく幸せな気持ちで朝を迎えたことだけは覚えている。
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