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 終業後、紫の家の最寄り駅で降りて、ふたりでスーパーに寄って買い物をした。何が食べたいか相談しながら食材をカゴに入れていく。 「なんか、新婚みたいだな」  そう呟いたら紫は腕を絡めてきた。嬉しそうな横顔を見て、俺の口角も自然と上がる。だけど、結婚の二文字を想像したら、遠野さんの顔が浮かんでしまった。 「なぁ、親が決めた相手と結婚しないといけないってなったら、どう思う?」  紫は少し悩んでから、私は嫌だなあ、と言った。 「だって、やっぱり一番好きな人と結婚したいじゃない」 「そうだよな。俺もそう思うよ」 「どうしてそんな話?」 「がそれで結婚するらしくて」  紫はふうん、と言いながらするりと腕を抜けていく。缶ビールを一本ずつ両手に持って、今日は飲もうか、と笑った。俺は頷きながらも遠野さんの結婚について考えていた。無理に結婚しなくたって、と言った俺に首を横に振った遠野さん。好きでもない相手と結婚する彼女は、どんな想いでいるのだろう。結婚する理由は恋愛ができないから? もう少し詳しく話を聞いてあげるべきだったかもしれない。 「煌太? まだ欲しいものある?」 「……いや、大丈夫」 「そ? じゃあ早く帰ろ」
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