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 ロータリーの柵にもたれるようにして待っていたら、紫が改札の向こうからやってくるのが見えた。俺のことを見つけると、頬を緩ませて手を振ってくる。俺はたったそれだけで心の底から安心した。 「遅くなってごめんね」 「ううん、大丈夫。こっちこそ疲れてるのにごめん。おつかれさま」 「どうしよっか。お腹空いちゃったし、軽く食べてから帰るのでもいい?」  紫は俺の腕を掴んで、行ってみたいところがあるの、と楽しそうに笑った。さっき見たばかりの焼き鳥屋の前を通過する。 「ここもね、気になってるんだけど、今日はお酒飲まないほうがいいよね?」 「あ……うん、そうだね」  そうして立ち止まったのは、屋台のラーメン屋の前だった。 「行きたかったのってここ?」 「うん。いつもいい匂いしてて気になってたんだけど、ひとりで行く勇気なくて。いい?」 「いいよ。俺もさっき見て行ってみたいなって思ってたから」  緊張しながら暖簾を(くぐ)り、こんばんは、と声をかける。ぐつぐつと煮えるスープの湯気の向こうで、オヤジさんがいらっしゃい、と少し黄ばんだ歯を見せて笑った。迷いながら一番オーソドックスそうな醤油ラーメンを注文した。
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