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 サヨコと過ごしたのは二週間余りという本当に短い時間だった。俺の青春はその二週間にすべて注ぎ込んでしまったと言っても過言ではない。中学三年生の夏という、受験生の大切な時期に、サヨコは俺の心を揺さぶって、そのままいなくなってしまった。  抜け殻みたいになった俺は、適当な高校に入って、適当な大学に進んで、適当な会社に入社した。可もなく不可もなく、つまらない日々がただ過ぎていくだけ。  今日は天気も冴えていなくて、鼠色の雲はそろそろ抱えきれなくなった涙を零しそうだった。 「一雨来そうだな」  空と同じような地味な色のダボダボとしたスーツを着た上司――上村(うえむら)課長――がぼそりと呟いた。ちなみに今日は俺もグレーのスーツで、正直二人で並んでるとお揃いみたいで恥ずかしい。 「えー、俺、今日傘持ってないのに」  いつもなら鞄の中に折り畳み傘が入っているのに、今日に限って邪魔だと追い出してしまった。書類を入れただけで膨れ上がる薄い鞄が忌々しい。
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