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 寝静まった住宅街をふたりで歩く。手を離したらまたサヨコがいなくなってしまう気がして、小さなその手を強く握った。 「寒くない?」 「うん。大丈夫」  ぽつりぽつりと言葉を落としながら歩く。本当に聞きたいことは先送りのまま、当たり障りのないことばかり話していたら、すぐに目的のファミレスに到着してしまった。  店内は俺たちと同じように寒さから逃れてきたようなグループが何組かいるようだった。気怠そうな店員に他のグループとは距離を置いた席に通される。外との温度差からか、サヨコの頬はほんのりと紅潮していた。 「ドリンクバーあるって。これでいい?」  メニューを広げて、想像していた以上に飲み物の選択肢があることに驚きつつそう訊ねると、サヨコはメニューを見つめながら頷いた。 「まさか、ファミレスも初めて、とか言わないよね?」  冗談のつもりで言ったのに、サヨコは申し訳なさそうに「そのまさかなの」と小さな声で返事をした。 「お母さんともなかなか行く機会なかったし、一緒に行く友達なんて……いなかったから。大人になってからはカフェとかには行くようになったけど」 「そっか」 「あ、でもドリンクバーはわかるわ」  得意げな顔で言ったサヨコが可愛らしくて、つい笑ってしまう。そんな俺を非難するように口を尖らせて睨んでくるけれど、その表情も可愛らしい。
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