93人が本棚に入れています
本棚に追加
ドリンクバーを頼んで、ふたりで並んで飲み物を選ぶ。少し悩んで、カフェラテのボタンを押した。
「そういえばお腹空いてなかった? 食べたかったら頼んでいいよ」
「夕飯は食べてきたから大丈夫。煌太こそお腹空いてないの?」
「俺も夕飯は済ませてきたから。俺さ、サヨコと行った居酒屋の常連になったんだ」
「ふふ。何それ」
サヨコは笑いながらホットココアのボタンを押した。
「それだけサヨコに会いたかったってことだよ」
「……ごめんなさい」
「謝らないでよ」
なんだか重たくなってしまった空気のまま席に戻る。白い湯気の立つカフェラテを一口飲むと、サヨコもマグカップを口につけた。
「会社の人に聞いたんだけど、お母さんの具合はどうなの?」
「お母さんは大丈夫。仕事辞めて駆け付けたらそんなことしなくてよかったのにって怒られちゃった。でも、まだ入院してるからなるべくお見舞いには行きたくて。今はまたこの辺りに住んでるの。こうやって戻ってくるなんて思わなかったな」
「そうなんだ。とりあえずお母さん元気そうでよかった」
「うん。ありがとう。心配してくれて」
とりあえず聞きたかったことのひとつは聞けてよかった。もうひとつのほうが気になるけれど。意味もなくカフェラテをしばらく眺めた後、サヨコの様子を窺うとぱちりと目が合った。
最初のコメントを投稿しよう!