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「家は、また今度にするよ。お母さんの留守中にお邪魔するのはさすがにやめておく。ね、そっち行っていい?」
サヨコの返事を待たずに彼女の横に移動する。恋人として隣にいられることがこんなにも嬉しいなんて。テーブルの下のサヨコの手を捕まえると、指を絡ませた。
「そういえば俺が煌太だっていつから気づいてたの?」
「確信したのは、さっき会えたとき。でも、あの雨の日にキスしたとき、『サヨコ』って呼んだでしょ? だから、もしかしたらそうじゃないかなって思ってた。そうだったらいいな、とも思ってた」
「そうだっけ? でも俺嫌なやつだったでしょ。サヨコのこと泣かせてばっかりで。てっきり嫌われてると思ってた」
「そんなことない。たしかにちょっと意地悪だったけど。でも、わたしも煌太のこと困らせたと思うし」
思い返せば、俺がサヨコに冷たく当たるのはただの嫉妬だったのだろう。もうサヨコのことを悲しませるようなことはしたくない。できれば笑顔でいてほしいし、もし辛いことがあったなら気の済むまで慰めてあげたい。
それから何度かカフェラテのおかわりをしたり、他愛もない話をした。結局サヨコは睡魔に勝てなかったみたいで、俺の肩に体重を預けて眠ってしまった。
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