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 いつからか夜空を見上げるのが習慣になってしまった。白い月が出ている夜は、サヨコに会えるんじゃないかって期待して。  結局彼女には会えないまま、時間だけが過ぎて、俺は大人になってしまった。  今も鮮明に覚えている。  夏休みの深夜のプールサイドで彼女に会ったあの日のこと。 ○ ☽ ○  俺は部室に忘れた携帯電話を取りに、深夜の学校に忍び込んだ。  プールのフェンスには抜け穴みたいなところがあるんだけど、膝を地面で擦りながら這い出ると、プールの縁に腰かけている少女が目に入った。  それがサヨコだった。  その日は綺麗な満月で、白い光がサヨコの横顔を照らしていた。  サラサラの黒い髪も真っ黒なノースリーブのワンピースも夜の闇に融けてしまいそうなのに、光を浴びた彼女の肌は輝いているようで、目が離せなかったんだ。
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