子喰い鬼の真実

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「いつの間にか村を出て行ったよ。どうなったのかは知らない。ただ、彼女がいなくなってから、時々森で歌を聞いたって人がいたんだ」   そう言うと、トワ子さんはさっき森で歌っていた鬼の歌を口ずさむ。 「人喰い鬼を知ってるかい。子供を喰う鬼知ってるかい。暗い森のその奥で。血濡れた歯を見せ笑ってる。熱いよ熱いよ火が点いた。鬼の子燃やせ、悪魔の子。骨の髄まで燃え尽くせ。誰が真の鬼だろか。それも解らず燃え尽くせ」 歌い終えると、トワ子さんはグラスに残っていたカルピスを一気に飲み干した。 後半の火が点いたから先は、昔の鬼は歌っていなかった。 あの火事の後に増えた部分なのだ。 思っていた通りだ。 最初に淵ヶ瀬の森で聞いた時は『子供を喰う鬼知ってるかい』で終わっていた。 だが、ユッコのお祖父さんが殺されかけた時には『血濡れた歯を見せ笑ってる』が増えたのだ。 鬼である美沙子さんは、その時々で歌詞を付け加えていたのだろう。 『火が点いた』という歌詞がこれから増えると気付いた私は、嫌な予感がしていた。 あの時、ちゃんとその事実を皆に伝えてあかね号から逃げていれば、アッキーもカズ君も死なずに済んだのに。 「火が点いたっていう部分から先は、火事の後に出来たんだよ。美沙子さんが姿を消して暫くしてから、時々森の中からこの歌が聞こえていたんだ。すすり泣きながら、夜の森を彷徨うように。いつからかパタリと聞こえなくなってね。でもこの村の人が入れ替わってからは昔の噂話だけが広まっちゃって、また怖いもの見たさに森を荒そうとする連中が出て来たんだ。だから、それからは私がこの歌を歌って回ってるってわけさ。誘拐なんてしちゃいないけどね。あの森は、私にとっても大切な想い出の場所だから」
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