31人が本棚に入れています
本棚に追加
「美夕ちゃん探してたんだよ!」
綾ちゃんも一緒だ。後ろから駆けて来たのは、仕事でくたくたの筈の父だ。
「怪我はしてないのか?」
父が私を頭のてっぺんから足の先まで見回した。
お祖母ちゃんと母は家で待っていて、三人は帰って来ないコタロウと私を探し回っていたらしい。
「ごめんなさい。でも、コタロウは元気だし怪我もしていないから」
「コタロウの心配だけをしていたわけじゃない!」
怒鳴り声に近い母の言葉が、小さな村に響き渡る。
「まぁ、見つかって良かったよ。ほら、中に入りなさい。母さんも。みんなご飯もまだ食べてないんだから。
「え?」
そんな訳ない。戸惑う私の背を龍ちゃんに押されて家に入った。
食卓には母が作った料理が並んでいた。落ち着かなくてうろうろしていたのか、祖母が廊下で手もみしながら待ち構えていた。
『美夕を引き取った後に二人が生まれて、美夕がどんどん遠慮をするようになってどうしたら良いのかわからなかった。同じ家族なのだとわかってほしくて、私は遠慮をせずに美夕に色んなことをお願いするようになっていたら、いつしか美夕のしっかりした所に甘えてしまっていたの』
そう言って、母は泣きながら頭を下げていた。
ごめんなさい。ごめんなさいと何度も謝られた。
だが、私はそんな母に何も言葉を返せないまま、テーブルに並べられた食事に箸をつけた。
祖母の畑で採れたナスの揚げ浸しと、焼き鯖。私はそれらを口に運ぶ。
「美味しい。ごはん美味しいよ。お母さん」
最初のコメントを投稿しよう!