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「おばあちゃん、炒め物どうかな」
「うん、しょっぱ過ぎなくて良いよ」
今年六十歳になるお祖母ちゃんは毎日畑仕事に出掛け、日々採れた物が食卓に並ぶ。
ここはお父さんの実家で、代々庭師をしているが決して裕福と言うわけでもない。
私は貰われ子と言うのもあって、正直少し肩身の狭い生活をしていた。
お祖母ちゃんも妹たちも決して意地悪をするわけでは無いが、母はやはり血の繋がる子供達と私とでは明らかに態度が違い、そんな母の前では無意識に肩に力が入ってしまう。
「それリリアン?懐かしいわねぇ」
お祖母ちゃんが私の腕に付いたオレンジ色のブレスレットを見て、頬を緩ませた。
「あ、うん。えっと、拾ったの。可愛いでしょ」
「昔随分流行ったのよ。まぁ電気の紐にしたりするくらいしか使い道無かったけど、当時は沢山作ったもんだ」
懐かしむように目を細め、漬物をぽりぽりと噛みしめる。
向かいに座って料理に手を付けずに眉根を寄せていた母が、訝し気な表情で口を開いた。
「そういえば美夕、今朝は村はずれの方に行ってなかった?集会所に行く用事があったんだけど、あんたが見えたのよ。どこに行ってたの?もしかして―」
「普段行かない所を散歩してみたかっただけだよ。大丈夫。トワ子さんの所に行ったか気になってるんだろうけど、行ってないから」
私が答えると、母は「ふぅん。なら良いけど」と微妙に納得していないような視線を私に向ける。
だがそれ以上私が何も言うつもりが無いとわかると、追究してくる様子も無く「いただきます」と手を揃えた。
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