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「ごめん!遅れちゃった!」
カズ君とユッコは既に津鉾神社に続く石階段の前で待っていた。
村の嫌われ者の私たちを、あからさまに嫌な目でジロジロと見るおじさんが階段を上っていく。
小さな男の子はカズ君を指さして「あっ」と声を上げたが、隣を歩いていた母親が、繋いでいた手を引っ張りながら「見ちゃ駄目!」と小さな声で叱る。
だがそんな人々の目を気にしていないかのように階段を上り始めた。
いつもは夜になると真っ暗で、昼間でさえ鳥や虫の声で溢れる津鉾神社も、今夜ばかりは人間の楽し気な声で賑わっている。
横一列に幾重にも吊り下げられた提灯。
両サイドを埋め尽くす沢山の屋台。醤油やソースの匂いに溢れ、奥の方には立派なやぐらの周りには、盆踊りの為の白い円が引かれていた。
「下で何人かには見られちまったけど、一応これ被るか」
鳥居の下で、あかね号の裏にあるおもちゃ箱から持って来たお面を出す。
何かのゲームのお姫様らしきお面が私に回って来た。
ユッコは白い狐の面。カズ君は戦隊ヒーローの黒色のお面を付け、賑わう人ごみの中に足を踏み入れた。
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