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「よし、良いぞ」
石階段の下で周りを確認したカズ君の合図で階段を駆け下りる。
遊びに来ていた人たちも殆どいなくなった神社の境内では、祭りの後片付けをする大人たちがせわしなく行き来している。
二人は村に帰るから良いが、私は人に見られないよう基地に戻らなければならない。
ユッコが神社の鳥居の傍から手を振っていた。
「これ、アッキーに渡しといてくれよな」
「うん。凄く楽しかった。また明日ね」
カズ君と、上から見ているユッコに手を振る。
ソーセージと焼きそば、焼きトウモロコシと綿あめとかき氷という食べきれないくらい沢山のお土産を手にアッキーの待つ基地へと急いだ。
「おかえり。凄いね、それお土産?」
腕いっぱいに抱えた食べ物や、水風船などの玩具を見てアッキーが吹き出すように笑った。
「ユッコが美沙子さんからお金を預かってたの。アッキーにも色々買って帰れるようにって」
匂いに釣られたコタロウが、ソーセージに鼻をくんくん言わせていた。
「僕一人じゃ食べきれないから、美夕も一緒に食べようよ」
並んでベンチに座り、ランプを灯したテーブルに食べ物を並べる。
半分ずつにしようというアッキーが提案した。私がかき氷を半分食べている間に、アッキーは焼きそばを食べる事になった。
「お祭り、楽しかった?」
焼きそばをすするアッキーの足元で、おこぼれに預かろうとするコタロウが、期待満々の瞳で穴が開きそうなほどに見つめている。
「うん、凄く。最初は人目も気になったけど、途中からは全然。ミツ婆ちゃんの話を聞いたからかな。お面を付けてたからってのもあるけど、悪く言われる理由も無いはずの人たちの視線も何も気にならなかったよ」
食べる時に人気の少ない所でお面を外した際に、近くを通った恋人同士と思われる男女がひそひそとこちらを見て話していたが、その頃にはどうでも良いと思えるようになっていた。
私には二人がいる。アッキーが待ってくれている。それだけで充分なのだ。
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